2007
鈴木エージ
1993年9月 全国ロードショー作品 日 103分
発売・販売:バンダイビジュアル(株)
=あらすじ・解説=ケアンズのディジュ・プレイヤーとして有名なデビッド・ハドソンが俳優として日本の映画に出ている!と聞いたのはずいぶん前のことでした。というのも、聞いたタイトルが英語のタイトルだったため探すに探せなかったのです(当時はまだネットが発達していなかった)。それが音楽評論家の山田道成氏に聞いてみたところ、やっと邦題が判明。そのタイトルは『シンガポール・スリング』というものだった。え〜?なんでシンガポールなの?オーストラリアが舞台だったはずなのに…。英語のタイトルも『Jail Bird's Run』というはずだった。
と少々混乱した頭でとりあえず映画を観ることに。が、映画を観はじめると益々混乱が激しくなってきた。
英語もろくにしゃべれず、無神経に写真を撮る日本人の新婚旅行者タツヤ(加藤雅也)とアミ(秋吉満ちる=関係ないが彼女は世界的に有名なジャズピアノの秋吉敏子さんの娘さんで、95年頃はマンデイ満ちるという名でシンガーとして活躍していた )がホテルに戻ると、そこに刑事がやってきて麻薬密売の容疑で捜査するという。事情の分からないタツヤは刑事を止めようとはね除けるが打ち所が悪く刑事は死んでしまう。所持品からコカインも見つかり、裁判の末タツヤは刑務所に。のっけから支離滅裂な展開ではじまるのだが、そこには別の秘密が隠されていた。
刑務所に送られたタツヤは他の囚人たちから尻を追いかけられ、様々な嫌がらせを受ける。そんな彼を助けてくれたのがジャスパー(デビッド・ハドソン)であった。彼はアボリジニの土地権運動の活動家として刑務所に入れられているらしく、他の囚人とは違い模範囚である。結構いい役である。彼にはケン(原田芳雄)という日本人の親友がおり、それで日本人に優しいのだろう。
ケンとタツヤ・アミ夫婦はバーで一度顔を合わせている。そのバーで取り上げられたタツヤのカメラの中に問題のフィルムが入っていたのである。そこには、この世に居るはずのないある人物の姿が写ってしまっていたのである。このフィルムのおかげでタツヤはハメられ、アミは組織に追われる羽目に。巻沿いを食ったケンが力を貸し、タツヤとジャスパーを奪還するため武装して刑務所を襲う。ここから先はマシンガンだのヘリの爆発だの、もうハチャメチャな銃撃戦が延々とつづくのは、監督・若松孝二の得意とするところなのだろう。
映画の出来の悪さとは別に、準主役といった役柄を演じたデビッド・ハドソンの演技はなかなか良い。逃亡の途中でディジュを吹く(これはちょっと無理がある)シーンで彼の演奏が聞ける。また、アボリジニのダンスや葬儀の場面も垣間みることができるが、どこまでホントかわからない。そもそもリアリティに全く欠ける映画だから…。
ちなみに製作として名前が挙がっている徳永英明は「あの」徳永英明であり、企画・原案は彼によるものらしい。また、この作品は『ポンコツ映画愛護協会』のリストにも掲載されています。(え)
(文・鈴木エージ)
→本サイト「ディジュプレイヤー紹介:3 David Hudson」(遷移)