JADA|映画:緑のアリが夢見るところ_アボリジニと芸術

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アボリジニと芸術:映画

緑のアリが夢見るところ =Where The Green Ants Dream=

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鉱石採掘会社と聖地を守ろうとするアボリジニの対立。提出された部族に伝わる「宝物」とは一体何だったのか?

2007

鈴木エージ

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STAFF+CAST

●スタッフ
脚本:ルッキ・スティペティック
監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
撮影:イェルク・シュミット=ライトヴァイン
美術:ウルリッヒ・ベルクフェルダー
編集:ベアーテ・マリンカー=イェリンクハウス
音楽:ワンドゥック・マリカ

●キャスト
ランス・ハケット(地質学者) ………ブルース・スペンス
ミリリッピ(リラティング族) ……………ワンドゥック・マリカ
ダイプ(リラティング族) ……………………ロイ・マリカ
コール(現場監督)…………………………レイ・バレット
バルディン・ファーガソン(副社長)……ノーマン・ケイ
ストリロー夫人…………………コリーン・クロフォード

(C)1985 Werner Herzog Filmproduction + ZDF
企画・提供:(株)東芝  販売:東芝映像ソフト株式会社


 

映画アイコン映画:緑のアリが夢見るところ
=Where The Green Ants Dream=

=あらすじ・解説=まさに空っぽの何もないオーストラリアの原野が舞台である。しかし、そこは白人にとってはウラン鉱脈の眠る「宝の山」であり、アボリジニの人々にとっては「緑のアリが眠る聖地」であった。
映画は、この空っぽの大地をめぐり、鉱石採掘会社の開発と、聖地を守ろうとするアボリジニの抵抗の様子を追い、最高裁判所での裁判劇へと発展する。そしてその過程において、主人公である採掘会社で地質調査を担当する白人の地質学者ランス・ハケットが、アボリジニの人々の文化に対し徐々に理解を示して行く姿を「緑のアリの伝説」に絡め、追ってゆく。

  • この映画のシーン1

映画の根幹を成す「緑のアリの伝説」とは、「夢見る緑のアリを起こしてはならない。この土地を破壊すれば、緑のアリの家が壊され、そうすれば彼らが私らの世界を壊すだろう」というもの。この土地にはウランの鉱脈があり、また劇中に登場する生物学者の言葉によれば、オーストラリアで地磁気が最もゆがんだ場所とされている。さらに「緑のアリ」=Green Ants (生物学的にはアリではなくシロアリの仲間でありゴキブリの方に近いらしい)は、「地場を感じる唯一の生物で、生きた羅針盤であり、地場を変えてやると狂いだす」という。
普段彼らは南北に並び進んでいるが、嵐などによる地場の変化が起きると、その行進が突然停まる。まるでその姿は、世界のはじめを夢見ているかのようで、アボリジニの人々はそれを緑のアリの「夢見る時」=Dream Timeと呼び、また嵐などのカタストロフの到来を告げるものとして恐れているのである。そして眠りから覚めた緑のアリの群れは一年に一度羽化し、精霊が住むとされる東の地に飛び立つという。

  • この映画のシーン2

映画の中での最高裁の判決では、アボリジニの土地所有権は認められず、鉱石採掘会社の採掘権を認めるという、アボリジニ側の敗訴に終わる。訴訟を前に採掘会社から贈られた軍用輸送機 = 緑の機体で大きな翼を持つその姿はまさに羽化した巨大な緑のアリだ = は、裁判に破れたリラティング族の長老を乗せ東の空に飛び立ったまま二度と戻って来ない…。この映画が作られたのは'85年であり、 アボリジニの土地所有権が認められた有名な「マボ判決」が出される7年も前のことである。

それにしても、裁判の中でアボリジニの土地所有権の証拠として提出された部族に伝わる「宝物」とは、一体何だったのだろう。200年間地中に埋められていたというその1メートルほどの木の棒には、意味不明な記号が刻まれていたらしいが、「みんなが見ると世界が滅びる心配がある」として傍聴人を退廷までさせたその秘密とは。(え)

(文・鈴木エージ)

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