2003年夏、私達、 |
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2006年2月10日、一宮の海岸に珍しいお客さんがやってきた。
それは2羽のコアホウドリでした。
羽根を傷めたのか少し弱っていたところを東京湾で保護され、行徳野鳥観察舎で静養していた2羽です。
○写真1:コアホウドリ♂ とても優しい目をしている |
1羽は♀の「フクちゃん」、もう1羽はまだ検査中で性別も分りません(後日、血液検査の結果♂と判明)。あまり長く保護していても弱るだけなので、1週間程度の静養ののち、ここ一宮海岸で放されることになったのです。
○写真2:行徳野鳥観察舎の山口さん(左)、佐藤さん(右)と打ち合わせ中のゆうちゃん(中) |
連れてきたのは行徳野鳥観察舎の佐藤さんと山口さんで、サギ調査を兼ねてはるばるいらっしゃってくれました。
お二人とも優しい熊さんのような人柄で(体型もそんな感じ)、佐藤さんは昨年のサギ調査でもいらしてくれたので2度め、山口さんは、以前いただいた見事なカラシラサギの写真を撮影した方と伺っていただけでこの日が初の顔合わせとなりました。
「鳥好きの人に悪い人はいない」という定説そのまんまのようなお二人でした。
ともかくお二人の御厚意で珍しいコアホウドリをこんなに間近に見られるという幸運をいただきました。ありがとうございます。
○写真3:いよいよ2羽を箱から出します |
「コアホウドリ」というけれど、実際はかなりでかい。羽を広げると2m近くあり、北半球で繁殖する最大の海洋鳥「アホウドリ」よりひとまわり小さいだけだ。ハワイ諸島のミッドウェイ島やレイサン島を集団繁殖地にしていて、国内では小笠原諸島の鳥島が唯一の繁殖地となっているらしい。繁殖後は北大平洋亜寒帯水域へ移動し、洋上で生活する。好物はイカ。繁殖地以外ではほとんど鳴かないらしい。
まずは最後の食事(お魚)を与え、2羽を波打ち際に運ぶ。箱から出された2羽は、「ここは何処?」と見慣れぬ景色に少し当惑したのか「カタカタカタカタ」とくちばしを叩き合わせた。が、しばらくすると陸から海に向かって吹く風に何度も羽ばたきをはじめました。おお、これはいけるかもしれない、と思っていると1羽(♂)が風に向かって走り出した。「飛んだ!!」っと歓声をあげたのもつかの間。1〜2m位の高さで20mほど飛んだものの失速し砂浜にすぐに降りてしまったのです。その後も何度かトライしたがそれ以上飛ぶことはありませんでした。
時折吹く風はそれほど弱くはなさそうでしたが、佐藤さんによれば、風がまだ足りないらしい。
○写真4:時々羽ばたきをはじめるのですが‥‥。右がフクちゃん♀ |
○写真5:なにやら説得する山口さん |
もっと風の強いところを探してもう一度試してみることになり、大原の海岸に移動。
風はさっきよりも確実に強い。再び羽ばたきをはじめた2羽。最初に動いたのはやはり♂の1羽だった。やった、今度は風を捕まえたようだ。強い風に向かって浜を飛び立ち、風に乗って海の方へ旋回した。100mくらいは飛んだろうか。海の上に着水したようだ。
○写真6:やった、飛んだぞー!! |
それに触発されたのか、続いて♀のフクちゃんも飛び立った。
でも、その羽ばたきはまだ弱々しい。案の定、30mほどの海上に降り、プカプカと波間に浮かんでいる。もはや海の上では手は出せない。沈まないだけまだましか。
○写真7:波間にプカプカ浮かんでいる |
先に飛び立った♂の方は、しばらくは双眼鏡でその姿が確認できたが、いつのまにか見えなくなっていた。気掛かりなのはフクちゃんだ。まだ、すくそこでプカプカと浮いている。
○写真8:足跡がとてもカワイイ |
心配していてもしょうがないので、近くでサギ調査をしながら、1時間ほど後にまた海岸に戻ってみると、やはりフクちゃんが砂浜にいた。再び保護されたフクちゃんは後日、神津島行路のフェリーの上から洋上に放されることになった。2月23日明け方、島近くで佐藤さんの手によって放されたフクちゃんは、やっぱり波間にプカプカ浮いていたそうです。無事に生きて行ってほしい、そう願うばかりです。(え)